コレクション

『六物新志』

展示中

1786年(天明6年)制作/サイズ:153×223mm(横×縦)

資料番号:29468

大槻玄沢の代表的著作。玄沢は江戸時代、文化・文政期に活躍した蘭学者の中心人物で、若い頃長崎に遊学し、多くのオランダ人と交流します。語学を習得した後、医学、天文、地理と幅広い分野の知識を吸収していきます。『六物新志』は当時、蘭学者の間で話題となっていた六種類の薬物の効能について、蘭書に基づき表したものです。
紹介されている薬のいくつかは今でも実際に使われています。中でも興味深いのはミイラと人魚です。ミイラは当時、乾燥させた人間の肉としてエジプトの代表的商品で、肺病の喀血などを止めるのに効果があるとされました。当時は薬用として世界中に売られています。この本は日本最初の薬物ミイラの研究書とも言われています。
人魚についてはこれも当時、世界中でその存在が広く信じられ、玄沢もまた人魚の肉は皮膚病に効き、その骨は血止めに良いと記しています。日本で人魚に関する記述のある書籍は他に、『日本書紀』、『古今著聞集』、『和漢三才図絵』などがあります。
『六物新志』は玄沢の長崎遊学で学んだ知識の成果を著した薬物研究書として、新しい知性を日本に育んでいきました。