コレクション

『西洋銭譜』

収蔵品

1787年(天明7年)制作/サイズ:160×227×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:51624

蘭学発展を機に、江戸の人々は書物を通じて、西洋文化の数々を知るところとなりました。これら書物が伝えた文物には、顕微鏡や望遠鏡、気球、洋服、靴、石鹸などさまざまありましたが、貨幣もその一つで、天明7(1787)年に出版された『西洋銭譜』という書物によって紹介されました。
著者は丹波福知山藩主の朽木昌綱(くつきまさつな)。蘭癖(らんへき)とも評された、当時の大名としては随一の蘭学者で、古銭収集家としても名を知られた人物です。本書では、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、イングランド、イタリア、ポルトガル、ロシア、ハンガリーなどの国々の貨幣について、金銭、銀銭、銅銭、鉛銭など百四十種類が紹介されています。これらの貨幣は、その表裏を図によって示されるとともに、重量と直径についても記載されています。さらには、各貨幣の流通した国の沿革や政治についても触れており、その点からも、単なる西洋貨幣の図説にとどまらず、海外事情としての性格を併せ持っていました。
本書の刊行にあたって彼は、当時交流のあったオランダ商館長ティチングらの助力を得て西洋銭を収集し、その銭型銘文を模写しました。その努力は並々ならぬものであったことは想像に難くありません。