コレクション

『チョーサー著作集』(ケルムスコット・プレス)

展示中

1896年制作/サイズ:310×425×55mm(横×縦×厚み)

資料番号:33173

ウィリアム・モリスの設立した印刷所から生み出された書物を、ケルムスコット・プレス刊本と呼んでいます。この印刷所から生まれた本が数ある書物の中でなぜ価値があるかを知るために、まずはモリス自身とその生きた時代を紹介しましょう。
彼が生きた時代は今から約100年前の世紀末イギリス。この時代は産業革命によるモノ作りの効率化を受けて、多量にモノが生み出せるようになった「モノの時代の始まり、消費時代の始まり」であり、経済効果中心の追求による、粗製乱造という言葉に表されるように、一つ一つ大切にモノを生み出す時代ではありませんでした。それは書物という精神的なモノも例外ではありません。
この時代に生きたモリスという人物は社会改良家、そして画家であり工芸家、すなわち思想家であり、モノ作りの人でもありました。彼がこの粗製乱造下のモノの時代に最後の仕事として取り組んだことが本作りであり、結果的に印刷所を自ら開くこととなりました。いうなれば、ケルムスコット・プレス刊本とは、モノ作りにおける精神性を社会に訴えるために生み出した結晶ともいえる書物なのです。