コレクション

『蘇峰詩集』

収蔵品

1944年(昭和19年)制作/サイズ:190×273mm(横×縦)

資料番号:33177

駿河版銅活字を使って印刷された、前・中・後三篇からなる徳富蘇峰の漢詩集です。この活字は徳川家康が家臣に命じてつくらせたもので、1962(昭和37)年に国の重要文化財に指定されています。南葵文庫の旧蔵品である駿河版銅活字は1940(昭和15)年に、ジャーナリスト、歴史家として著名な徳富蘇峰と日本勧業銀行総裁の石井光雄の仲介により、凸版印刷株式会社の所蔵となりました。蘇峰と石井はどちらも愛書家で、古写本・古版本を数多く収集していたことで知られており、この活字の貴重さについては当然よく理解していたのでしょう。
『蘇峰詩集』は蘇峰80歳のお祝いにこの活字で蘇峰の詩集を印刷することを石井が切望し、企画されたようです。印刷は2ページずつ駿河版銅活字で組版したものを紙型取りし、実際の印刷は平鉛版で行ったようです。その際、活字が足りず木活字を1500本ほど彫り足したそうです。4年の歳月をかけ、1944(昭和19)年に印刷は完了しましたが、製本屋に持ち込まれている間に、「空襲で全部烏有に帰してしまった」(川瀬一馬による)とのこと。当館に残る本書は見本として作られたもので、貴重な1部となったのです。