コレクション

『南総里見八犬伝』

収蔵品

1814年(文化11年)~1842年(天保13年)制作/サイズ:160×228×18mm(横×縦×厚み)

資料番号:34797~34913

曲亭馬琴が28年もの歳月をかけて完成させた、全9輯98巻106冊にも及ぶ、江戸時代を代表する超大作です。完成間近に失明した馬琴が、亡息の嫁の路(みち)に口述筆記させて完成させたという逸話が残っています。物語は、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の霊玉を持ち、牡丹の花のあざのある八犬士が、さまざまな難を退け、里見家を再興させるというもので、勧善懲悪の世界が描かれています。
江戸時代に至ると、出版文化は大きく花開き、数多くの出版物が世に出ることとなりました。江戸時代前期は上方(京・大坂)を中心に、仮名草紙や浮世草紙などが出版され、人気を集めました。その後出版文化は上方から江戸へと移り、読本や洒落本、滑稽本、人情本、黄表紙などさまざまなジャンルの作品が刊行され、読者層を広げることとなりました。
『南総里見八犬伝』は読本を代表するものですが、読本とは、江戸中・後期の小説ジャンルで、名前の通り文章を主体としています。怪談や奇談、伝説を要素としており、中国の小説の影響を受けていますが、馬琴も本書を著すにあたり『水滸伝』に構想を借りています。
作品の中での八犬士の活躍は、江戸庶民を喜ばせ、多くの読者を獲得することとなりました。発行部数は年間で500部であったと言われていますが、価格が高かったため、庶民の多くは貸本屋を介して読んでいました。