コレクション
ケルムスコット・プレス『黄金伝説』
収蔵品
1892年制作/サイズ:216×300×50mm(横×縦×厚み)
資料番号:34984~34986
あらゆる聖人の生涯を紹介する、西洋中世を代表するキリスト教文学。ドミニコ会士でジェノヴァの大司教ヤコブス・デ・ヴォラギネによって13世紀にラテン語の散文でまとめられました。説教に活用され、文学や美術作品の典拠となるなどキリスト教精神にふれる際の必読書で、各国語に翻訳され、写本、西洋初期活版印刷本(インキュナブラ)ともに多く制作されました。
19世紀イギリスでケルムスコット・プレスを主催したウィリアム・モリスも本書を手がけた一人で、全3巻をバーナード・クォリッチ社から出版しました。プレスを代表するゴールデン活字は本書に由来します。当初プレス最初の書籍として刊行予定でしたが、製作に時間を要し他のタイトルが先行しました。
モリスが底本としたのはイギリスで最初に活版印刷を行ったウィリアム・カクストンによる1483年の英語版です。編集者F.S.エリスの協力で、カクストン版からいくらか修正を加えたものの原典に忠実に印刷しました。第1巻の扉ページの装飾はモリスによるほか、友人である画家バーン・ジョーンズが2点の挿絵を提供しています。中世写本やインキュナブラを愛したモリスにとって外せない作品といえます。