コレクション

河原町仁衛門版『平家物語』

展示中

江戸初期(元和頃)制作/サイズ:200×275×13mm(横×縦×厚み)

資料番号:37033~37034

源家の勃興と平家の没落をドラマチックに描く『平家物語』。『吾妻鑑』『太平記』とならび鎌倉時代に成立したもっともポピュラーな歴史物語といえるでしょう。中世をとおして、主に琵琶法師によって楽器の演奏といっしょに語り継がれてきました。本書は『平家物語』が印刷テキスト化された最初期のもので、木製の活字で印刷されています。流れるような手書き風のつづき文字ですが、2-3文字ごとに活字にして印刷されています。江戸初期に登場した活字印刷によりテキストが固定化され、誰もが古典をたのしめる時代が訪れたのです。
巻末に「この平家物語は一方流(いちかたりゅう)による監修され、出版を命じられた 河原町 仁衛門」との表記があります(当館蔵本には欠)。平家琵琶で演奏し平家物語を語る流派のひとつ「一方流」が責任をもって監修したことがわかります。正しいテキストには校正校閲が欠かせませんが、専門家の知恵と活字印刷の技術のおかげで正しい『平家物語』が残っていくことになりました。今日語り継がれる物語がついに完成したいえるでしょう。当館では『平家物語』の別バージョンとしてしられる古活字版『源平盛衰記』も所蔵しています。いずれも源平の栄枯盛衰をしるのに欠かせない古典です。