コレクション

『木曽街道六十九次之内 京都 鵺 大尾』

収蔵品

1852年(嘉永5年)制作/サイズ:260×370mm(横×縦)

資料番号:37345

画面いっぱいに描かれているのは、虎のような動物に見えますが、実は鵺(ぬえ)と呼ばれる妖怪です。『平家物語』巻第四に登場します。手足は虎ですが、頭は猿、胴は狸、尻尾は蛇で、声は鵼(ぬえ)〔虎鶫(とらつぐみ)という鳥〕に似ていたとあります。平安末期、深夜になると、御殿の上に、東三条の森の方から黒雲がやって来て、天皇を脅えさせました。勅命を受けた源頼政は、雲の中にいた鵺を弓矢で射落としました。以来この武勇伝「源頼政の鵺退治」は武者絵でおなじみの画題となります。
しかし勇ましい武士ではなく、むしろ得体の知れない怪獣を主題とするところが、浮世絵師・歌川国芳の大胆さです。弓矢を構える源頼政は画面の右下に小さく描かれています。さらに、鵺が乗る黒雲と夜空の黒の墨色の違いや、稲妻を思わせる光の表現を見ると、彫師や摺師たちも、いかんなく力を発揮した多色刷り木版画であると感じます。『木曽街道六十九次』は全七十一枚、目録一枚の揃物です。日本橋から始まり、京都が大尾(最後)を飾ります。そのせいでしょうか、京都の妖怪である鵺の大きな尻尾と大尾をかけているような気がしてなりません。