コレクション

「千ぼんくい両国橋」

収蔵品

1880年(明治13年)制作/サイズ:240×367mm(横×縦)

資料番号:37348

小林清親の出世作「東京名所図」シリーズの1枚です。清親は、もとは旧幕の士でしたが、浮世絵を独学し、「光線画」と命名された「東京名所図」を明治9~14(1876~1881)年にかけて版行していきました。
両国橋の北、隅田川東岸の川中に、河岸保護のための乱杭(らんぐい)が打たれていました。“千本杭”または“百本杭”とも呼ばれていたようです。この界隈は、芥川龍之介の『本所両国』でも紹介されています。水面から突き出た杭を近景に大きく描き、遠景に両国橋を望む、大胆な構図です。暮れ移る空、漁師が乗りこなす小舟、揺らめくさざなみの影などに、故郷である本所への親しみや夕暮れ時の情緒が感じられます。
明治9年は、日本でも油絵がはやり出した時期でした。西洋の技法を意識した清親は、多色摺り木版画で、陰影法や遠近法などを駆使し、光と影、色彩の変化を繊細に表現した「光線画」を新たに開拓しました。文明開化に翻弄されている東京の中で、まだ残っている江戸の風物や生活に郷愁をよせる清親の浮世絵は、多様な表現ができるメディアであることを示しているようです。