コレクション

渡部温『通俗伊蘇普物語』一ー六

展示中

1872年(明治5年)制作/サイズ:148×224×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:38124

ペリー来航以来、日本における学問の中心は蘭学から洋学へと移ります。幕府の蘭書翻訳所として1856年に設置した蕃書調所も1862年洋書調所、翌年い開成所と改名されます。この蕃所調所では、1850年にオランダ政府から寄贈された手引き印刷機と欧文活字を用いて、西洋の文化や技術を紹介する専門書や教科書など様々なものが印刷されました。
本書の著者である渡部温は、この蕃書調書の英語スタッフとして1862年に入所し、柳河春三、神田孝平などの洋学者とともに、兵学、地学、経済など様々な洋書の翻刻に励みます。沼津兵学校の英語教師も務めた彼は、『地学初歩』、『陸軍士官必携』など近代化を促す教科書の翻訳に携わりました。
その後、蕃所調所の活字ご用出役であり、洋式木版彫刻を研究していた榊篁邨の協力を得て、藤沢梅南、浮世絵師河鍋暁斎の挿絵入りの版本『通俗伊蘇普物語』六巻を翻刻しました。翻訳の原本となったのは主に、トマス・ジェームズのÆSOP'S FABLESで、それまで断片的にしか紹介されてこなかったイソップ寓話に対して237編を紹介し、教材に用いられたほか、その後の児童文学としてのイソップ物語の翻訳に大いに貢献しました。