コレクション

福沢諭吉『改暦辨』

展示中

1873年(明治6年)制作/サイズ:150×220×3mm(横×縦×厚み)

資料番号:41058

明治期の国民にむけて、太陽暦導入に対する心構えを説いた書。政府による太陽暦への改暦は急な出来事でした。明治5(1872)年11月9日に改暦が発表され、実施されたのが同年12月3日、つまり公表から実施まで、準備期間が一ヶ月なかったのです。旧暦にあわせて農業を営んでいた農民は「新暦反対一揆」を起こしたり、政府周辺にも反対勢力がいたりして、改暦そのものをやめてしまえ、という機運が高まります。そんなときに本書は出版されました。
政府のやり方はともかく、太陽暦がどうして必要なのか、福澤らしいわかりやすい言葉で国民に訴えかけました。冒頭から新暦が必要とされる経緯を述べる中、「太陽暦がいらない、なんていう奴は大バカ者だ」と厳しい口調で断じる箇所もあります。わかりやすく、ためになる、と海賊版まで出る始末。二十万部も売れたベストセラーになったことから、いかに福澤の意見が国民の支持を得ていたかわかります。
巻末では時計の文字盤の見方を説明しています。いまでは当たり前の時計も、当時の人びとにとっては目新しかったのでしょう。ちなみに当初は輸入時計のみで、国産の時計が売り出されたのは明治20年以降になります。