コレクション

神﨑正誼編集『官員名鑑』全

収蔵品

1877年(明治10年)制作/サイズ:190×83×38mm(横×縦×厚み)

資料番号:55750

この書物は、明治政府が成立した直後に発行された役人の名簿です。新政府樹立に関わった三条実美、岩倉具視、大久保利通などの名前が掲載されている貴重な名鑑です。この印刷に使用された活字は弘道軒清朝体という書体の活字で、明治8(1875)年に設立された活版製造所「弘道軒」で製造されたものです。当時としては珍しい打ち込み式(パンチ式)の製造法で鋳造に必要な母型を作成していました。弘道軒を設立したのは神崎正誼という人物です。神崎は、鹿児島藩士の家に生まれ、西郷隆盛とともに戊辰戦争を戦った武士ですが、その後に勝海舟の庇護を得て活字の製造を始めました。明治14(1881)年には『東京日日新聞』に採用されて広くその名が知られるようになりましたが、後発の築地活版製造所の活字にその座を奪われてしまいます。
現存している打ち込み用の鋼鉄製父型は、職人の手による薬研彫りによって作られています。また、打ち込まれてできた銅製母型には細かな調整痕があり、鋳造する際の苦心の様子が伝わってきます。弘道軒清朝体は繊細さと力強さを兼ね備えた美しい楷書体で、現在でもデジタルフォントとして使われ続けている書体です。