コレクション

『非水百花譜』

収蔵品

サイズ:300×438×27mm(横×縦×厚み)

資料番号:41337~41338

杉浦非水が原画を描き、多色摺木版にてつくられた植物図集。初版は600部限定で、会員へ頒布されました。1920(大正9)年から2年をかけ、1輯(しゅう)につき5種類ずつ全20輯が刊行されました。関東大震災で版木が焼失してしまうものの、残されていた原画から版木を彫り、1929(昭和4)~1934(昭和9)年にかけて再び発行されています。
図は多色摺りだけでなく、茎や葉といった図の一部分のみ空押しが行われています。また紙は、発行元である春陽堂の名が透かしとして漉き込まれた鳥の子紙が使われました。版画の一部には、彫りや摺りを担当した職人の名が記された証書が貼られ、当代一流の職人が製作に関わっていることがわかります。材料から職人に至るまで贅を凝らしたつくりでした。
一方、各版画には、植物の解説や採取の日時、花や葉の実物大の部分図、非水が自ら撮影した写真、葉にインキを塗って写し取る印葉図が、別刷りの解説として付されています。各々の図は、写真製版を駆使しながら1ページにまとめられました。
非水の類まれなる観察眼は、植物が持つ美的側面と博物学的な知識を選り分けました。また、それぞれにふさわしい印刷方法を用いることで、互いを補完しあう図集を生み出したのです。