コレクション

縮緬本「日本昔噺」

収蔵品

1885年(明治18年)~1914年(大正3年)制作/サイズ:101×150mm(横×縦)

資料番号:48109~48128

明治中期から後期にかけて、紙でありながら絹織物の縮緬のような手触りをした本が発行されました。縮緬本と呼ばれるこれらの本は印刷された紙にその後、特殊な加工を施し、縮緬のような手触りに仕上げてあるのです。明治になって日本を訪れた外国人の土産物として人気を博しました。
ここで紹介するのは、縮緬本の発行者(社)の中で中心的な人物である長谷川武次郎(弘文社)が発行した縮緬本「日本昔噺」です。長谷川は縮緬本の仕掛け人とも言われています。明治18(1885)年頃から「日本昔噺」約20編を一つのシリーズとしてまとめ、英語を手始めに、フランス語、スペイン語、ドイツ語など多数の原語に翻訳出版しており、日本の文化を外国人に知らせるのに一役買ったと言えるでしょう。印刷も新しい技術を用いず、伝統的な木版多色刷りにこだわっています。
伝統的な印刷技法、日本人の間で語り継がれてきた昔噺、そして絹織物の縮緬のような手触りと、19世紀末の西欧における日本趣味に呼応するかのような縮緬本が外国人に受けたのも納得がいきます。