コレクション

『日本紀行』Voyages de C.P. Thunberg, au Japon

収蔵品

1796年制作/サイズ:210×262mm(横×縦)

資料番号:51652

スウェーデンの医学者で植物学者でもあるツンベリーは、1771年にヨーロッパを出港し、アフリカやアジアを周航しました。帰国後に彼は、9年にわたる旅行記を『ヨーロッパ・アフリカ・アジア紀行』(全4巻)としてまとめ、刊行しました。『日本紀行』は、このツンベリーの著書を、フランスの東洋学者ルイ・ラングレスが仏訳したもので、その大半が日本について紹介に充てられています。
ツンベリーは、「分類学の父」と呼ばれたカール・フォン・リンネを師として学び、師の希望により、アフリカ喜望峰と日本の植物の調査・採集に行きました。1775年に日本に到着し、1776年12月までの1年4ヶ月余りの間、長崎出島のオランダ商館の医師として滞在しました。『日本紀行』には、出島における生活をはじめ、地理、政治、宗教、言語、風俗、動植物、鉱物、貨幣、農業、産業、文学、暦などが、図版をまじえて紹介されています。また彼は、オランダ商館長による江戸幕府に随行しましたが、江戸において将軍徳川家治に謁見したことや、桂川甫周(ほしゅう)や中川淳庵ら蘭学者と対談したことも記述しています。
リンネとの約束を果たすべく、滞在期間中に日本の植物を採集し、標本として持ち帰ったツンベリーは、その成果をもとに、後に『日本植物誌』を刊行します。この書物は、植物学者としての彼の名声を高めるとともに、日本の植物を西欧に広く知らしめる役割を担ったのです。