コレクション

『オラティオ・ドミニカ』(主の祈り)

収蔵品

1805年(文化2年)制作/サイズ:245×320×40mm(横×縦×厚み)

資料番号:56629

ボドニという書体で有名なイタリアの印刷人、ジアンバッティスタ・ボドニ(1740ー1813)が1806年に制作した世界の文字の活字見本ともいうべき書物です。書体名や書体設計者としてのボドニだけではなく、ボドニの他の一面をうかがい知ることができます。
ボドニは、それまでの活字書体や誌面構成に新しい様式を持ち込んだことで有名ですが、そのボドニの制作した書物の一つがこの『オラティオ・ドミニカ』(主の祈り)です。
本書はフランス帝立印刷局が、ナポレオン一世の命により制作した原本をもとに制作されたものです。キリスト教布教と植民地政策、オリエンタリズムの流行による東洋学の発達などにより、西洋諸国ではさまざまな原語の活字がつくられました。しかしローマンアルファベットの活字に比べ、漢字活字のデザインはまだ稚拙で、完成度は低いものでした。モダン・ローマンという最先端のフォルムを持つ活字を作り上げたボドニであっても、漢字活字のフォルムにまでは創造が及ばず、フランス帝立印刷局のコピー(模造)に過ぎないものに終わってしまいました。
新しい書体をつくったボドニと、漢字書体をコピーしたボドニ。本書はグーテンベルクから続く印刷の相反する二つの面「創造と模倣」を同時に垣間見ることができるのです。