コレクション

カラースキャナーPDI-HR14

収蔵品

1950年制作

資料番号:54008

世界で初めて製作・実用化されたカラースキャナ。イーストマン・コダック社が所有する特許を買い取ったタイム社によって完成されました。その後、タイム社によって設立されたPDI(Printing Developments Incorporated)から供給されました。内部機構の秘密が流出することを恐れたためか、当初はリースのみでしたが、のちに販売され、全世界へと普及しました。
写真の機械は、最初期のHR型。後に普及型であるMR型が発売されました。
昭和36(1961)年、日本の印刷業界に、黒船が来たかのような大騒ぎがありました。印刷大手4社にPDIスキャナが導入されるという噂が広まったからです。もし、それぞれにスキャナが導入され、フル稼働したら、国内のカラー製版の仕事がすべて片付いてしまうことになる!とばかりに死活をかけて導入をはかる他社をも巻き込み、日本中の印刷会社が注目しました。
現在のスキャナと比べると真空管を使用した大型で仰々しいこのスキャナに、それほどまでの性能があるとは信じられないかもしれません。印刷には不可欠な網点をつくることもできない上に、拡大、縮小すらできません。しかし、原稿写真の色を分解し、さらに修整までを一度にできるこの機械は、それまですべてを光学的に手で行っていたことから考えれば、驚くべきスピードだったのです。
実際には、導入後の製版のほとんどがこのスキャナでまかなわれたわけではありません。むしろ、カラー印刷の需要が刺激され、その結果、オフセット印刷のカラー化がますます進んだからです。