コレクション

『イギリス鳥類誌-陸鳥編』

収蔵品

1885年制作/サイズ:175×265×35mm(横×縦×厚み)

資料番号:54301

Bernard Quaritch 編集により1885~87年にかけて出版されたトマス・ビューイック記念全集全5巻のうち、図版は第1巻『イギリス鳥類誌 陸鳥編』のタイトルページです。
イギリスの木版画家トマス・ビューイック(1753~1828年)は、当時あまり普及していなかった木口木版による白線木版画を発展させました。作品の多くが書物の挿絵として発表され、特にページの余白に描かれた小さな飾絵はヴィニェットと呼ばれ親しまれました。
『イギリス鳥類誌』第1巻「陸鳥編」は1797年に初版が出ています。刊行にあたりビューイックは、鳥類を勉強し、挿絵の鳥をできるだけ自然な状態で描くようにしました。もともとニューカッスル近郊で生まれ、野良仕事を手伝いながら田舎の風景や動物の絵を描いて過ごしたことが、その基礎をつくっていたと言えそうです。
しかし意外にもタイトルページのヴィニェットには、ニューカッスルの紋章が刻まれた石碑の背後に、煙突から出た煙や川を行き交う船など、騒々しいようすを感じさせます。産業革命の進展により都市化が進み、愛着がある農村の変貌が始まったことを、ビィーイックは複雑に感じていたのかもしれません。