コレクション

袁了本 無名上人和訳『和語陰隲録』

収蔵品

1777年(安永6年)制作/サイズ:154×230×14mm(横×縦×厚み)

資料番号:54657

本書の原書となった『陰騭録』は、中国明代の学者である袁了凡が、息子の天啓に書き残した教訓の物語です。それからおよそ二百年後の安永6(1777)年、日本では本書『和語陰騭録』として無名上人により出版されました。
タイトルの「陰騭」は『書経』にある思想で、「陰」とは陰徳を、また「騭」とは一定の数のことを指します。誰も見ていない所で我々が徳のある行いをすれば、天は幸福を、悪事であれば禍(わざわい)をもたらすので、人は天意に従って行動すれば安定した生活ができるというものです。了凡はかつて自分が占いの通りに、高級官吏への道を歩んでいたので、人生は宿命であると考えていました。しかし、ある禅師との出会いをきっかけに立命を悟り、これまでの生活態度を反省し、陰善を積み重ねていきました。善行を続けて十数年、すると待望の男子を授かり、進士の試験にも合格し、運命は自ら変えられることを知りました。
本書『和語陰騭録』は木版刷りによる漢文で、序文、本文、跋文すべてに力強い印圧を感じます。胸に応えるこの立命の書物は、きっと江戸時代も親から子へ読み継がれていったことでしょう。