コレクション

『民間経済録』

収蔵品

1877年(明治10年)制作/サイズ:149×220×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:55930

福澤諭吉が初めて書いた経済書です。ベストセラーとなった『學問ノスヽメ』明治5~9(1872~76)年のいわば経済学入門版として出版されました。
入門版とはいえ、労働価値や賃金、経済に大切な智恵・倹約・正直の三箇条、物価や金利、そして政府の職分や租税に至るまで、多岐にわたる経済学の各テーマを、当時の日本の実状に即しながらわかりやすく論じています。その中で、とりわけ注目してしまうのは「第五章 勉強の事」において、印刷に関係する話が出てくることです。経済には「分業」があり、衣食住の品物で多くのものは、一人の手によって作られているわけではない。福澤は「東京の錦絵草双紙」を分業の例として取り上げて、彫りは人物の顔や体、文字や草木で彫る者を分けていること、摺りも一人の職人によって文字や絵が刷られているわけではないことを、説明しています。「夫々に業を分てば、仕事も埒明き、手際も上達して、大に便利なるものなり」と「分業の効能」を評しました。東京の印刷を引き合いに出して、アダム・スミスの分業論を紹介したのです。