コレクション

『春色梅児誉美』

展示中

1832年(天保3年)~1833年(天保4年)制作/サイズ:120×185×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:58816~58827

為永春水が著した人情本の代表作です。美男子の丹次郎を主人公とし、丹次郎の許婚のお長、深川の芸者米八など境遇の異なる女性たちとの恋愛模様が描かれています。女性を中心に大人気となり、女性の読者を増やしました。
本書は人情本の元祖といわれ、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』とともに、江戸時代を代表するベストセラーとなりました。人情本とは、江戸時代後期に確立された新しい文学ジャンルで、下町の情緒豊かな江戸町人の恋愛を中心に描いた、婦女子向けの風俗小説です。中本、泣本とも呼ばれ、天保年間(1830~44年)に全盛期となり、明治初期に至るまで流通しました。
為永春水は、『春色辰巳園』、『春色恵の花』などの「梅暦シリーズ」と呼ばれる続編も執筆し、さらに人気を高めました。しかし、天保の改革の取締りによって、天保13(1842)年に風紀を乱す者として、手鎖五十日の刑を受けることになり、翌十四年に失意のうちに亡くなりました。