コレクション

エラスムス『聖ヒラリウス著作集』

収蔵品

1544年制作/サイズ:230×345×57mm(横×縦×厚み)

資料番号:60431

初期キリスト教父の一人、聖ヒラリウス(315頃~367年)の著作。聖ヒラリウスはポワティエ(フランス)の司教で、ローマ=カトリックの博士。神とキリストと聖霊は一体とする〈三位一体説〉を支持したことで知られます。
当時教会を二分していた三位一体説への自説を中心に、詩篇やマタイに関する論文が本書に掲載されます。中世を通して、写本のかたちで残っていましたが、活字本は1523年にバーゼルのフローベン書店から刊行されました(本書は後版)。出版にあたり、同書店に逗留していた人文主義者エラスムスが校訂にあたります。巻頭のパレルモ大司教カロンドレ宛の書簡、本文欄外の脚注がエラスムスによるものです。エラスムスはこうしたキリスト教書を校訂し、ヨーロッパの有力書店から出版しました。埋もれていた初期キリスト教書を活字化したことは、キリスト世界はもちろん、ヨーロッパ思想史において輝かしい功績といえるでしょう。
他に『聖ヒエロニムス著作集』『聖イレネウス著作集』『聖バシレイオス著作集』『聖アンブロシウス著作集』を上梓します。キリスト教の正しい理解が、人文主義に欠かせない、としたエラスムスの思想が、こうした教父研究に表れています。