コレクション

『アエネイス』(ウェルギリウス詩集より)

収蔵品

1492年制作/サイズ:219×325×76mm(横×縦×厚み)

資料番号:72962

ニュルンベルクの初期印刷者、アントン・コーベルガー印行。ラテン文学最高傑作との呼び声が高いウェルギリウスの作品です。古代ローマの飾り気のない生き方からルネサンス期の人びとは大きな刺激を受けました。ギリシャとトロイアとの戦争を描いたギリシャ文学『イリアス』『オデュッセイア』をもとに構成されているのも特徴です。
ローマの伝説上の建国者アエネアスがトロイア戦争から無事に脱出し、カルタゴへと放浪します。女王ディドとの悲哀を経て、イタリア半島へ上陸。土着の諸王との戦いを制し、ついにローマを征服するところまでが描かれています。ちなみに『アエネイス』はアエネアスの物語、の意味。
作者ウェルギリウス(前70~前19)はマントヴァ出身。アウグストゥス帝時代に詩人としてローマで名をなし、ナポリ近郊で過ごした晩年の十年間に本書を著しています。シュバインハイムとパンナルツが1469年にローマで初版を刊行して以来、十五世紀ヨーロッパだけでおよそ百も版を重ねたことから、後世のヨーロッパ文学成立にいかに大きな影響を与えたかがうかがえます。本文活字は、ヴェネツィアでニコラ・ジャンソンが製作したローマン体活字「ヴェネツィアン」と同系統です。1490年代にはアルプスを越え、ジャンソンの活字がドイツでも使われていた証しといえるでしょう。