コレクション

築地活字

収蔵品

サイズ:300×375×28mm(横×縦×厚み)

資料番号:75936

150年前の1869年ー。上海美華書館のウィリアム・ガンブルを招いて鋳造技術を教わった本木昌造は、国内で初めての近代的な活字製造に取り組みました。本木のもとで学んだ平野富二は、それを東京へ事業展開し全国に活字の活用を広めていくことになります。本資料は、その平野が東京・築地で立ち上げた東京築地活版製造所製の活字です。
活字には、その側面に製造所の商標などを刻印した「ピンマーク」と呼ばれる表示があります。本資料のピンマークを見てみると、左にわずかに凹みのある円の中にHがあることから、東京築地活版製造所製の活字であることが分かります。この円の意匠は創業者本木の「も」を図案化したもの、Hは平野のイニシャルから取られているといわれます。もともと長崎新塾出張活版製造所であった製造所が、会社として名称を改めた1885年頃に制定された登録商標です。
社長平野の死後も継続して採用され、惜しまれながらも廃業となった1938年までの約70年間、その歴史と高い品質の印として刻まれ続けました。
ピンマークは印刷物を手に取る読者には知られることのない存在です。しかしこの印を糸口にして、現代の私たちは150年前に想いを巡らせることができるのです。