コレクション

『官刻 六諭衍義』

収蔵品

1721(享保6)年制作/サイズ:202×295×10mm(横×縦×厚み)

資料番号:77273~77274

『六諭衍義(りくゆえんぎ)』は、明の洪武帝による民衆の教化を目的にした六つの教訓「六諭」を、明末・清初に范鋐(はんこう)が解説した書です。孝順父母(父母に孝順であれ)などが記されています。
琉球の朱子学者・程順則(てい じゅんそく)が福州で本書と出会い、自ら刊行して琉球に持ち帰りました。薩摩藩主・島津吉貴(よしたか)に献上され、後に徳川幕府中興の祖とも呼ばれた第八代将軍・徳川吉宗のもとに渡ります。吉宗は庶民教育に役立てるため、荻生徂徠(おぎゅう そらい)に訓訳を、室鳩巣(むろ きゅうそう)には和訳でおおよその意味がわかるものをつくることを命じました。訓訳版は、江戸で官板(かんぱん)として出雲寺和泉掾(いずもじ いずみのじょう)らにより1721(享保6)年に刊行され、後に京都の版元を中心に賜板(しはん)としても刊行されました。和訳版は『六諭衍義大意』と名付けられ、翌1722(享保7)年に刊行されています。寺子屋の教科書としても重宝され、その後の教育施策にも影響を与えました。
順則が訪れた福州は中国でも印刷が盛んな都市の一つであり、琉球は明との朝貢貿易のなかで東シナ海の貿易の拠点となっていました。本書はそのような中国、琉球、日本が交錯する東アジアのネットワークの中で誕生した印刷物といえます。吉宗は書物の奥付を制度として決めたほか、『普救類方』、『度量衡考』なども出版させたりと、印刷・出版ともかかわりが深い人物です。